中庭みかな「沈まぬ夜の小舟 上・下」「金平糖の海」のネタバレ感想|世界一泣ける!伝説のBL小説が待望の書籍化

小説

中庭みかな先生「沈まぬ夜の小舟 上・下」「金平糖の海」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


麻酔科医×身寄りのない病院の清掃員 のお話。

<あらすじ>
母を亡くし居場所を失った17歳の創は、あるきっかけから、母が入院していた病院に麻酔科医として勤める高野と、その後輩にあたる外科医の瀬越の世話になることに。
けれど、絶対に知られたくない秘密と想いを抱えている創は、二人に嘘を重ね続け…?

 

こんな人におすすめ

  • 思いっっっきり号泣したい😭
  • 健気な受けが報われる話が読みたい🥺
  • 2人のスパダリ攻めに愛される受けを見たい💕

 

ネタバレ感想

沈まぬ夜の小舟 上

辛いとき、自分を鼓舞させるように高野先生(攻めその1・本命カプ)の口癖「眠っている間に痛いことも辛いことも全部終わっています」を必死で繰り返す創ちゃん(受け)に涙が溢れます。

人を傷つける隙を狙う、悪意に満ちた人々が世界を作っている。泥に塗れながらも、その中で創ちゃんの純真無垢な愛だけが灯台のように静かに輝いて見えます。

瀬越先生(攻めその2・サブカプ)に寄り添いたかった創ちゃんは逆にその純粋さを疎ましく感じた彼に傷つけられてしまいますが…、2人は一体どうなるのか。

特効薬

高野先生に偶然出会えたことに喜んだり、おばけが怖くて高野先生に手を握って貰えばよかったとちょっと後悔する創ちゃんがかわいいです。
高野先生も創ちゃんが自分と一緒にいたがってるのを汲み取って一緒にいる時間を長くしてあげようとしたり、優しい…。

でもただ創ちゃんがかわいい、高野先生が優しいだけのお話ではありませんでした。

創ちゃんが実は「鏡が嫌い」という理由が「そこに映っている自分の姿を見るのが嫌い。見覚えのない他の誰かがいるような気がする」と言うシーン。
創ちゃんは他人のために自分をずっと蔑ろにしてきたから、自分を直視するとそこには醜いものが映っているように思えてしまうのかな。自分を愛することが苦痛なのかな。そんなふうに思いました。

創ちゃんが鏡の中の自分をまっすぐ見つめられるのはいつになるだろう…と切なくなりました。創ちゃんの苦しみとささやかな喜びが詰まった、切なく優しい短編です。

Siren

瀬越先生を虐める藤田先生…こういう人いるよね、と胸糞悪かったです。
瀬越先生は「他者を傷つける術を持たないと言う事は、自分の身を守る術を持たないのと同じだ。」と言っていたけれど、悪意に満ちたこの世界を生きるには他者を傷つける術がないと心穏やかに生きていけないですよね。悲しいけれど。

一番泣いたのは、(高野に)向き合う創は、瞳だけでなく顔も体も、全身を高野に向けている。きっと心も、魂というものがあるとしたらその深部まで含めて、彼の全てが高野を見ていた。という部分。
創ちゃんの高野先生に対するひたむきな…真っ直ぐすぎるくらいの純粋無垢な愛、それを羨ましく思う瀬越先生の行き場のない怒りと寂しさ。

魂の深部まで含めて誰かを見つめるって、なんて素敵で…胸が苦しくなる表現なんでしょう。心臓をぎゅうと握られたように、愛おしさで胸が苦しくなりました。

【電子限定おまけ付き】 沈まぬ夜の小舟 上 【イラスト付き】
作者:中庭みかな
母を亡くし居場所を失った17歳の創は、あるきっかけから、母が入院していた病院に麻酔科医として勤める高野と、その後輩にあたる外科医の瀬越の世話になることに。けれど、絶対に知られたくない秘密と想いを抱えている創は、二人に嘘を重ね続け…?

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沈まぬ夜の小舟 下

創ちゃんは良い人間になりたくて、周りにいる誰のことも傷つけたくなくて、頑張ればそうなれると信じていました。

心と身体中の痛みや寒さをこらえて睡眠薬をたくさん飲んで「冬眠」しようとした創ちゃんは、「俺、ちゃんと頑張るから。起きたら、ちゃんとまた、がんばるから。」と高野先生に必死で言い縋ります。

「もう、がんばらなくていい」 と怒ったように返す高野先生の言葉に涙が溢れました。そう、創ちゃんが頑張る必要なんてないんです。創ちゃんはありのまま、そのままで十分素敵だもの。

創ちゃんは家に居場所がなく、昔からマンションの屋上に行っては寝袋で寝ていたことを高野先生に話します。寝袋は星空を駆ける一艘の小舟みたいで好きだと言う創ちゃん。明日になればもう少しだけ、いろんなことが良くなるはずだと信じて祈るように眠りについていた創ちゃん。

こんなに優しく繊細で豊かな心を持った子をどうして邪険にできるのか、創ちゃんの父親を全く理解できません。

後妻を迎えてから高野先生が創ちゃんについて尋ねたときに「息子はまだ生まれていませんが」と本気で訝しげな返答をしたこと、私は憎しみではらわたが煮えくり返りそうでした。創ちゃんはそんなこと望まないだろうけど、私は創ちゃんの父親も後妻も許せません。

創ちゃんを傷つけてしまった瀬越先生が「俺のこと、怒ってよ、創ちゃん…」と懇願するシーン、瀬越先生が他人には滅多に見せない本心・弱さがありのまま表れていて、好きでした。

灯火

愛を求めても返されることがない世界で生きてきた創ちゃん。1人でよく耐えてきたねと力いっぱい抱きしめたいです。

「もう1人は終わりだと伝えたかった。その言葉ではなくて、それ以外の言葉や行動全てで。いつか、彼が心から、もう1人では無いのだと、何の言葉もなくてもそう思えるようになるために。」
高野先生のこの言葉が本当に嬉しかったです。そしてきっと高野先生が愛を注ぎ続けたいつかの未来で、創ちゃんはそう思えるようになるはずだと信じています。

lamplight

瀬越先生を正しい方向に導いてくれるたったひとつの灯火は、創ちゃんですね…。瀬越先生にとって創ちゃんがどれだけ大きな存在なのかを知られた短編でした。

酔っ払って、自分が買ってあげたエプロン姿の創ちゃんを「かわいいじゃないか」って初めて見たように言う高野先生には笑いましたw

野の花

創ちゃんは毛布とか肌触りのいいものが好きって初めて知りました。赤ちゃんみたいで可愛いです。
しかし高野先生のご両親に挨拶…緊張する!

高野ジェントルくんかわいいいいいいい!創ちゃんの靴を両方とも持っていっちゃったのには笑いましたw 早く家に上がっての印なんて嬉しいなあ。

高野先生のお母さんもお父さんも穏やかな人で、創ちゃんに優しく包み込むように接してくれて…嬉しいです。読みながら胸に熱いものが込み上げました。いかにもな田舎の風景描写がのどかで、それもまた過ぎゆく時間をゆっくり感じさせてとても素敵です。

「いつか自分も高野が育った場所の一部になれたらいい」と創ちゃんが思っていたけれど、私もその日が楽しみです。でもすでに創ちゃんは高野先生の一部ではあるけどね。
高野先生のお母さんが「あの子が連れてくるなら野の花のような人だと思っていた」と言っていたけれど、まさに創ちゃん…!

「話してきた。全部」「おまえが小さい枕嬉しそうに持ってるの見たら、何か黙っていられなくなって」「お前がこんなにかわいい、いいやつなんだって、どうしても話したくなった」
高野先生の愛情が溢れてて好きです。小さい枕を大事そうに抱える創ちゃん、たしかに愛おしくていてもたってもいられなくなっちゃうかも。

お母さん、創ちゃんをぺんぺん草みたいな子ってw 絶妙なチョイスに笑ってしまいましたw

たったひとり

創、それは「きず」という意味。これだけで本編の凄惨さを知っている自分は心揺さぶられます。泣きそう。

「見上げてくる瞳は、怖いほどまっすぐで、澄んでいた。不安も恐れも、何もかも忘れたように、彼は瞬間、ただ高野の姿を目に移すためだけに、その命のすべてを費やそうとしているように思えた。」
創ちゃんの透明感、この世のものではないような純粋すぎるところ、無垢さを感じる一節です。創ちゃんはいつだって全身全霊で生きている…。

高野先生にとっても、創ちゃんにとっても、互いが「たったひとり」。
最後に繰り返される「たったひとり」に思わず涙が溢れます。

上下巻購入者限定SS「灯りの甘く導くほうへ」

創ちゃんはいちごのアイスクリームが好きなんですね…かわいいな…🍓
留学の日が近づくにつれて創ちゃんと離れがたくて顔を何度も見にくる瀬越先生もかわいいです。

瀬越先生の「1ミリに満たない針だって人を殺せるでしょう」は胸に刺さりました。自分の身の回りのことに置き換えて、苦しくなってしまいました。本当にそうだ…。
瀬越先生は、創ちゃんが傷つきすぎて何か反動があるんじゃないかと恐れてるんですよね。

「おまえはしてしまったことを後悔するし、俺はしなかったことを後悔する。それを背負っていくしかないんじゃないか」高野先生の力強い答えは、いつも読者の心を強くしてくれます。どんな答えを自分で出してやったとしても、それを背負っていくしかないんだ。

魂で愛して、求めてくれる。創ちゃんらしい真っ直ぐな愛し方に、胸が痺れたように熱くなります。かわいいな、愛おしいな。よくこんな真っ直ぐな子を痛めつけられたな、と創ちゃんの父親と継母を罵倒したいです。

「おまえ、性に奔放か」「ぽ……ぽんぽこ……?」のやりとりが可愛すぎて爆笑しました😂www ぽんぽこ…!!!タヌキやん…!!!

こだぬき創ちゃんがおいしそうにアイスを食べる姿、私も見たいなあ。

【電子限定おまけ付き】 沈まぬ夜の小舟 下 【イラスト付き】
作者:中庭みかな
ひとりで生きるために心身を曇らせる行為とそんな自分を密かに温めてくれる想い、そのどちらも隠そうと嘘を重ね続け―あろうことか、仕事のトラブルで憔悴する瀬越先生へ抗えず体を差し出していた創。罪の意識ではち切れそうになった創は同時に、自分は高野先生に触れたい、触れてほしいのだと気づいてしまった。寄せては返す波のように止め処ない事態と感情は、創の痩せっぽちな体には収まらず溢れて…。

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金平糖の海 沈まぬ夜の小舟 after story

「許されるならもう一度君を抱きたい」と瀬越先生が告げた後、絵本の王子様のように創ちゃんの手にキスするシーンが好きです。
瀬越先生は創ちゃんのことが好きなんだな、愛し方を間違えてしまったんだなと苦い思いで胸がいっぱいになると同時に、瀬越先生はなんて寂しい人だろうと辛くなるのです。

「求めるものが与えられないことを嫌というほど分かっていて、最初から諦めている。」
瀬越先生の生き方そのもののようです。創ちゃんは優しいから自分を痛めつけてでも相手を慰めようとしてしまう、そのことも瀬越先生は知っていて創ちゃんのことを好きなんだろうなと苦しくなります。

瀬越先生は創ちゃんを好きだからこそ、自分の罪をあらわにする好意についても全て思い出として覚えておきたい…それってなんて歪な愛なんだろうと泣きたくなります。

瀬越先生が留学!!と衝撃でした。しかし、ロールキャベツ美味しそうですねえ。

「眠っている間に、ぜんぶ終わりますからね。 嫌なことも苦しいことも、起きたら全部、終わっていますからね……。」
この言葉、何度読んでも泣きます。創ちゃんが辛い時、心を支えてくれた高野先生の言葉。そしてそれを教えてくれたのは瀬越先生。

「誰も、傷付けたくない。誰も嫌な思いをしてほしくなくて、そのために創にできることがあるのなら、何でもしようと思ったのに。それでもやっぱり、こんな風に、うまくできない。」
この言葉を読むたび、創ちゃんがどれだけ優しい子かを再認識します。誰も傷つけたくないから自分が傷つこうと考えてしまう優しさ、うまくできないと苦しんで自分を責める優しさ。そんなに自分を傷つけなくていいんだよと抱きしめたいです。

「俺は一度、持っていたものを全部なくした。それから、またひとつひとつ、ほんとうに必要だと思うものを少しずつ取り戻していった。いまここにあるのは、どれも俺にとって必要な、大事なものばかりなんだ。おまえもそのひとつだよ」
だから、と高野は続けた。「俺の大事なものを、おまえももっと大事にしてくれないか。この世でたったひとつなんだから。替えが利かない」
おまえもそのひとつだよ、と言ってもらえる、だからおまえもおまえ自身を大切にしてくれと言ってもらえる喜び。これまで身近な大人たち(血のつながった両親にさえ)に蔑ろにされてきた創ちゃんはどんなに嬉しかったろうと涙が溢れます。

「きみはもう、きみひとりのものじゃない」
瀬越先生はこれを言うのも苦しかったんじゃないかなと思います。改めて創ちゃんが自分のものにはならないと自覚させられてしまうから。瀬越先生…🤦‍♀️

「好きな人に抱かれる、君を見せて」って、拷問だと思います。もし自分が瀬越先生の立場だったら。誰よりも本当は大切にしたかった宝物を傷つけてしまって、ずっと罪の意識に苛まれていて、まるで贖罪のためにその傷を広げようとしているような言葉に聞こえます。それこそが瀬越先生の誠意の証なのかもしれません。

かわいい、かわいいと創ちゃんを抱く2人が愛おしいです。2人の胸から愛が溢れて言葉になって出てきたような、そんな純度の高い愛を感じます。

終わった後、瀬越先生が創ちゃんを抱きしめるシーンが好きです。かつてできなかったこと、できてよかった。瀬越先生が本当は与えたかった創ちゃんへの愛情を少しでも示せて本当によかったと、涙と共に安堵が溢れてきます。

「幸せだった。幸せだけど、寂しかった。明日にはもう、ここにはいられないからだ。ここはまるで、創にとって幸せな「あの世」みたいだと、そんなことを思った。」
創ちゃんの完璧に幸福な世界があまりに無欲で泣きたくなります。高野先生と瀬越先生がいればそれでいい。幸せだけど寂しかったという言葉が、創ちゃんそのものを表しているようにも感じられます。創ちゃんに寂しいと思わせないくらい胸いっぱいの幸せをあげたいです。

「ずっと幸せでいて」「…でないと俺が拐いにきちゃうよ」
瀬越先生の精一杯のプロポーズという感じがしました。聞いている方が泣いてしまいそうなくらい、愛に溢れている言葉です。

創ちゃんが高野先生や瀬越先生みたいな立派な大人になりたいと言った時、「創ちゃんは創ちゃんだよ。他の誰とも違う」と言ってくれたのも嬉しかったです。誰か立派な人になろうとしなくていいんだ、ありのままでいればいいんだ、瀬越先生はありのままの創ちゃんを愛しているんだと改めて痛感しました。

「強くて間違わないものだけが、人を生かすわけじゃない」
瀬越先生の言葉の中で1番大好きな言葉です。本当にそうだ…。

「これからの創を生かす、ちいさな星の光のたてる音だった。」
声をあげて泣いてしまいました。なんて美しい一文だろうか。創ちゃんは既に瀬越先生と高野先生とこうやって幸せに過ごせる時間はもうほとんどないと予期していて、それを切なく悲しく感じている…その思いがギュッと詰められたような一文で、心臓を握られたように息苦しくなりました。
創ちゃん、無理しなくていいからどうかありのまま幸せに生きてねと願わずにはいられません。

スイートチリ・シュガーナイト

「身体中が、透き通った澄んだ光でいっぱいに満たされているのを感じる。爪の先まで全身すべて満たす明るくあたたかいこの光は、きっと甘い。」
愛おしいという感覚をこんなふうに表現できるなんて、と感嘆しました。なんて優しくて繊細で美しい表現だろう…。

おまもり

「いつでも、優しさや希望と隣り合わせにいる存在。」
瀬越先生にとって創ちゃんはそんな存在なのだろうなと思いました。人間は善いものだと思い出させてくれる、そして優しさや希望と隣り合わせにいる存在。
創ちゃんは天使みたいな子だな…とその尊さに自然と涙が溢れます。

金平糖の海 沈まぬ夜の小舟 after story
作者:中庭みかな
珍しく風邪で寝込んでいるという瀬越を看病したいと申し出た創。そこで、熱に浮かされてせいにして瀬越がようやく口にできた、心の底からの望みを知る―。高野も瀬越も傷つけず、どちらにとっても最上の結果を導き出したい創は、考えに考え、高野に相談を持ち掛ける。

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まとめ

普段は1〜2日で小説を読み終えてしまう私ですが、本シリーズは読み終えるのにとても長い時間をかけました。

中庭先生の作品は、ひとつひとつの言葉・文章が手癖ではなく、魂から痛みを堪えながらひとつひとつ拾ってきて、何度も編んでは解いて…を繰り返して生み出されたものだとひしひしと伝わってくるから、自分もその想いに応えねばと、腰を据えて読みました。

読み終えて、やっぱりこの読み方をして良かったと涙をぼろぼろ流しながら思いました。

創ちゃんという、この世の悪を全て濾過してしまうような優しさの塊の男の子。彼を庇護する麻酔科の高野先生と、庇護したいはずなのに高野先生への純粋すぎる創ちゃんの想いへの嫉妬からつい彼を傷つけてしまう外科の瀬越先生。

3人がそれぞれ抱えた苦しみや痛みと戦いながら懸命に大切な人を守ろうとする姿が、痛々しくも美しく、ただただ涙が溢れて止まりませんでした。

読みながら何度も、なぜ自分は創ちゃんが辛い時そばにいてあげられないのだろうと悔しくてくちびるを噛みました。それくらい、作中の世界観に没入させられる素晴らしい作品でした。

これから本シリーズを読もうと思っている人には、ぜひ時間をとってじっくり読んでほしいです。澄んだ言葉たちがぎゅっと詰まった宝箱のような物語です。読めばきっと、あなたの心も知らないうちに浄化されています。

BL小説史に残る、感動の名作です。

 

追記:「沈まぬ夜の小舟」シリーズの同人誌が出ました!!🥳🎉

以下、ネタバレ感想記事を書いたので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。