ラストがわかっているのに読めば必ず涙する、二人の儚い物語、アダム・シルヴェラ「今日、僕らの命が終わるまで」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
里親ホームで暮らす不良少年と引っ込み思案な優しい少年 のお話。
<あらすじ>
真夜中0時過ぎに、その日死ぬことを予告するサービス「デス=キャスト」が普及した世界。
死を告げられた二人の少年、マテオとルーファスは、最後の時を共に過ごす相手を見つけるアプリ「ラストフレンド」を通じて出会う。
克服したい過去や、後悔、叶えたかった夢――様々な想いを胸に、二人は最後の一日をどう生きるのか?
こんな人におすすめ
- 生と死について考えたい💭
- どんな人生を送りたいかを今はっきりと答えられる/答えられない🛣️
- 泣ける作品が読みたい😢
本作をもっとよく知るための小ネタ
①全米100万部突破!NY Times ベストセラーリスト15カ月連続1位!
ネタバレ感想
①ラストがわかっているのに涙が止まらない
本作は「デス=キャスト」という、「今日死ぬ人に電話で宣告がなされる」という世界のお話です。主人公のマテオとルーファスは冒頭でデス=キャストから電話を受けていることから、このお話の最後には死ぬということが確定しています。
ラストが分かっている状態で小説を読むという体験はあまり多くない(自らネタバレを読まない限りは)ことなので、最初は新鮮な気持ちで読んでいました。主人公たちが死ぬと言われていても、それはあくまで創作の世界でのこと。「死ぬ」という言葉に実感が湧かないまま、「そういうラストの選択肢もあるだろうな」程度に軽く考えていたんです。
でも、ページをめくるほど、主人公たちは自分のやり残したことに後悔したり、挑戦しようとしたり、愛する人に言葉を残したり、残された時間に怯えながらも懸命に生き抜こうとしていて、命の灯火を必死で燃やし尽くそうとする姿を見ていると、「死がいつか訪れるのは、彼らだけじゃない。自分だって同じじゃないか。どうしてマテオやルーファスだけの、創作上の問題だと楽観的に考えていたんだろう?」と思うようになっていきました。
それに、ページをめくるほどに二人がどんな人間なのかがよく分かってきて、ただの創作物上の赤の他人ではなく、血の通った知り合いについて読んでいるような気持ちになっていきました。
二人の生い立ち、今悩んでいること、時間や勇気があればしてみたかったことを知るほどに、「二人に死んでほしくない」「どうして彼らが死ななければならないのか」という苦しみと怒りが強くなり、実は死ぬ以外のラストが待っているのではと思い込ませようとしている自分に気づきました。
ラストはみなさんのご想像の通りでした。
自分だって、頭では分かっていました。それでも、涙が止まらなかった。二人が死んだことを受け入れられなくて、心臓を握りつぶされるように痛みました。
「人が死ぬ」。宇宙の長い歴史から見れば、人間が生きて死ぬまでなんて一瞬です。それでも、人ひとりひとりにたくさんの人の愛や想い、物語が詰まっています。
死ぬことが最初から分かっているからこそ、生きることのかけがえのなさを教えてくれる作品だと感じました。
②二人が互いに愛を自覚するまでも、してからも、全てが眩しくて尊い
ルーファスはバイセクシャルを自認しており、マテオは自分の性的指向にはっきりした輪郭を持てないでいました。
そしてそんな二人は、「ラストフレンド」というアプリで、死ぬまでのタイムリミットが24時間を切った者同士として出会います。
臆病な性格ゆえに何事にもチャレンジできなかったマテオを、暗い部屋から明るい世界に引っ張り出すルーファス。
両親と姉を事故で亡くしてから死んだように生きていたルーファスに、世界に散らばる希望や優しさを教えるマテオ。
自分にないものを持つ相手を知るほど、そして相手の優しさや愛情に触れるほど、二人はお互いが友情を超えてかけがえのない存在になっていることに気づいていくんです。
私はマテオが唯一の親友・リディアに人生初のカミングアウトした時の言葉が大好きです。
「僕は(自分の性的指向について)納得できる理由が見つかるのを待っていたんだと思う──告白に添える、美しくて、とびきりすてきな何かを。それがルーファスなんだ」。
なんて美しくて、胸を打つ告白でしょう。この言葉を読むたびに、マテオにとってルーファスがどれほど大切な存在なのかを思い知らされます。特に、内気なマテオにこれほどの言葉を言わせるルーファスの無垢な心の輝きを思って、胸がいっぱいになります。
マテオを守るように、彼の家に行き、ベッドから出るなよと言うルーファスの不器用な愛にもぐっときます。愛する人をもう誰も失いたくないのだというルーファスの思いが伝わってくるようで…。
たった24時間足らずしか一緒にいられなかった二人。けれども、その10数時間は二人のこれまで生きてきた10数年間と同じくらい密度の濃いもので、愛を自覚するには十分すぎる時間でした。
愛は時間ではなく互いの想いの濃さが生むのだと感じさせられます。
③あっけない最期に、心が追いつかず…。
マテオとルーファスは、それぞれ別の理由で死にます。以下、二人の死に方をネタバレしているので要注意です。
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マテオはルーファスのために紅茶を淹れてあげようとして死にます。ずっと不調だったガスレンジが暴発したのです。マテオの健気なルーファスへの愛、それが彼を殺すことになるなんて、誰が想像したでしょうか?
誰もが納得する死に方なんて存在しないと分かっています。それでも、私は悔しくて辛くて、泣かずにはおれませんでした。
マテオは内気で、勇気を出して行動する時はいつも他人のためでした。大学進学のために貯めていたお金はリディアにプレゼントし、余ったお金もホームレスにあげたりと、彼の行動の先にはいつも他人の幸せを願う気持ちがありました。そんな利他的で優しい彼が、最期の瞬間まで他人のために生きていた彼が、どうして火傷で苦しんで死ななければならなかったのか。熱くて、息苦しくて、辛かったろう。そう思うと、神様の胸ぐらを掴んで問いただしたくなります。どうして人の死に方は選べないのかと。
ルーファスは決して品行方正ではありませんでしたが、仲間や家族などの愛する人たちを自分のこと以上に大切にしようと努力する優しい少年でした。
そんな彼も、車に撥ねられて死にます。隣にマテオがいたなら、道に飛び出したルーファスを引き留めてくれたかもしれません。でも、マテオは先に死んでしまっていた。マテオの死にうちひしがれるあまり、ルーファスは安全確認を怠ったのです。やりきれません。
二人の死は、あまりにも呆気ないものでした。二人がこれまで頑張って生きてきた人生の道のりを思うと、こんなにも簡単な理由で死んでいいはずがないと泣き叫びたくなります。せめて死ぬ時は二人には痛みを感じず、安らかに死んで欲しかったと、何度も思ってしまいます。自分には誰の死をも操作する力はないと分かっていても、二人を愛しているからこそ願わずにはいられないんです。
リディアやプルートーズは二人の死因を知ってどれだけ辛かったろうと考えてしまいます。
まとめ
24時間以内に死ぬ人に電話をかける「デス=キャスト」から、連絡を受けたマテオとルーファス。二人は死を受け入れられない気持ちと葛藤しながらも、最期の日を懸命に生き抜こうとします。
死を真剣に考えるのは怖いからこそ、日々を惰性で生きてしまう人は多いはずです。けれど、私たちは確実に死へと日々近づいているのだと、改めて突きつけてくれる作品でした。だからこそ、今日を真剣に生きなければと思わされます。
あなたがもし今日死ぬのだとしたら…。
マテオとルーファスとともに、最期の日の過ごし方を考えてみませんか。