樋口美沙緒「パブリックスクール〜ツバメと殉教者〜」のネタバレ感想|愛されなかったから愛し方が分からない

小説

樋口美沙緒先生「パブリックスクール〜ツバメと殉教者〜」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


母から性的虐待を受けていた由緒ある伯爵家の長男×母から愛されず父から性的な目で見られ続ける日本とイギリスの混血児 のお話。

<あらすじ>
由緒ある伯爵家の長男で、名門全寮制パブリックスクールの監督生(プリフェクト)――なのに、制服は着崩し、点呼や当番はサボってばかりのスタン。
同学年の監督生・桂人(けいと)は、密かにスタンを敬遠していた。
ある日桂人はスタンの情事を目撃してしまうが、見られても悪びれない態度に、苛立つ桂人は優等生の仮面を剥がされてしまう。

 

こんな人におすすめ

  • 攻めと受けが苦しんだ末に愛し合う姿に惹かれる🥹
  • 愛とは、人生とは何かをじっくり再考したい🤔
  • yoco先生の耽美な絵でパブリックスクールの青年たちを愛でたい🤤

 

ネタバレ感想

「愛されなかったから、愛し方が分からない」は名言

ネグレクト、虐待

主人公の桂人(受け)は、自分の所属するパブリックスクールの寮の代表であるメンベラーズから、文化祭の出し物で「愛について」自分の意見を短く話すよう求められます。

しかし桂人は母に「あの子さえいなければ私は自由なのに」と言われて育ち、父(二番目の父。血は繋がっていない)には父の面影を投影して性的な目で見られ続け、無償の愛を与えられたことがありませんでした。

真面目な桂人は悩み、苦しみ、そして、メンベラーズに「愛は愛された人しか分からないと聞きました。僕は愛されたことがないから愛が分かりません。愛し方も分かりません」と泣きます。

それは、誰にも心を開かず、「他人に愛されようと期待するな」と硬い鎧で自分を守ってきた桂人が、生まれて初めて自分の弱さを認めて殻を破った瞬間でした。

メンベラーズは桂人を抱きしめ「小さな羽でよくぞここまで飛んできてくれたね。ありがとう」と感謝します。

このシーンを読むたび、私は涙が止まらなくなります。

メンベラーズの「よくぞ小さな羽で…」と桂人を労わる言葉の温かさ。「愛されたことがないから愛も愛し方も分からない」と叫ぶように告白した桂人の決死の勇気。そのどちらにも心が震えます。

 

「愛はいつも大小なりとも自分にも他人にもある。自分は愛されていたんだ」と知る桂人の尊い気づき

桂人はずっと両親に求められない子どもでした。でも、彼はスタン(攻め)の暗い過去を知ったり、メンベラーズの助けを得て、愛の一つの真実に気づきます。

それは、「愛はいつも大小なりとも自分にも他人にもあって、いつの間にかそれを与え合っている。自分はいろんな人から愛されていたし、愛していたんだ」ということ。

優しい言葉や気を遣った態度、そういったものの中に含まれる愛を自分が愛だと感じてこなかっただけで、本当はそれらは愛だったのだ、愛し愛されたことがないと思い込んでいたのは自分の勝手な考えだったのだと桂人は思うのです。

この世は愛に溢れてるじゃないか!と桂人はハッとして、生まれ変わったような心地になります。

桂人が愛の一つの答えに行き着くこのシーン、私も頬を叩かれたような、ハッとさせられる思いでした。

この世が愛に溢れてるなんて、思ったこともありませんでした。この世は僻みや妬み、悪意に溢れていて、まるで地獄のようだとしか思ったことはなかったのです。でも、桂人の言うように日々の小さな優しさに目を凝らすと、毎日にこんなに愛が溢れていたことをなぜ見逃していたんだろうとハッとさせられたのです。

愛は両親だけから与えられるものではない、世界のどこからでも愛は与えてもらえるし、自分も与えることができるのだと、私は桂人に教えられました。

 

yoco先生のスタンと桂人は本っっっ当に耽美

yoco先生といえば今やBL小説界では知らない人がいないほど引っ張りだこの人気イラストレーターさんですが、樋口美沙緒先生のこの「パブリックスクール」シリーズは一貫してyoco先生が表紙も挿絵もご担当されています。

パブリックスクールという題材だけでも耽美な香りがするのに、さらに線が華奢で緻密なyoco先生の絵がそこに加わると、耽美さが一気に増すんです!!!

スタンはパブリックスクールの監督生という生徒を束ねる立場の者でありながら、制服はかなり着崩していてワイルドです。筋肉隆々の金髪碧眼の美男子、まるでギリシャ彫刻がそのまま人間になったような美形です。

一方、桂人はいかにも模範生という感じで、首元まできっちり制服を着こんでおり、地味めながら清楚でミステリアスな美しさを誇っています。

そんな対照的な二人の肉感的かつお耽美な絵をぜひ楽しんでいただきたいです!!

 

まとめ

BL小説界、永遠の名作です。

「パブリックスクール〜ツバメと殉教者〜」はまるで哲学本で、愛について、人生について、そこらの自己啓発本なんか目じゃないくらい深く深く考察されています。もはや、哲学本(BL風味)といった感じ。

BL小説は読み応えが命!という方、BL小説で号泣させられたい、感動させられたいという方、BL小説のレジェンド作品を体感したいという方、皆さんぜひ「パブリックスクール〜ツバメと殉教者〜」を読んでください。

読んで絶対に後悔はさせません。

むしろ、読んだ後、あなたも私のように長文感想を書きたくなること間違いなし!!

スタンの、桂人の暗い心の傷、そしてメンベラーズの策略。さまざまな思いが錯綜する名作で、たった一記事では魅力を語りきれない!!と私の心が吠えています😂

まずぜひとも手にとってみてください!

パブリックスクール〜ツバメと殉教者〜
作者:樋口美沙緒
由緒ある伯爵家の長男で、名門全寮制パブリックスクールの監督生(プリフェクト)――なのに、制服は着崩し、点呼や当番はサボってばかりのスタン。同学年の監督生・桂人(けいと)は、密かにスタンを敬遠していた。ある日桂人はスタンの情事を目撃してしまうが、見られても悪びれない態度に、苛立つ桂人は優等生の仮面を剥がされてしまう。

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