やわらかな星は、涙が出そうなほど甘かったーー、中庭みかな先生「キャンディカラーの世界できみと」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
寡黙なカフェレストランシェフ×スランプ中のライトノベル作家 のお話。
<あらすじ>
ライトノベル作家の智紘がいっしょに暮らす家族は、高校時代からの付き合いになる最愛の恋人・周とニワトリ(ボリスブラウン)のマチルダ。
物語世界に没頭してすぐに寝食を忘れてしまう智紘を机から引き剥がし、手ずからおいしいごはんを食べさせてくれる周は寡黙な男前で、小さなカフェレストランでシェフをやっている。
ただ見ているだけで充分だったあの頃からは信じられないくらい幸せな日々に、未だに夢のようだと思ってしまう智紘だが……。
こんな人におすすめ
- 飯テロなBL小説が読みたい🍽️
- カップルの痴話喧嘩にハラハラしたい👊💥
- 心理描写が丁寧な作品が好き✒️
本作をもっとよく知るための小ネタ
①マチルダの名前の由来になった『智紘が子どもの頃から好きだった本』は実在する。
マチルダの名前の由来になった『智紘が子どもの頃から好きだった本』はこちらのご本です おとなになってから読んでも面白いです
マチルダはちいさな大天才https://t.co/CgXS8Yhbhw
— 中庭みかな (@NNMikana) June 30, 2018
②電子版の特典SSの内容についてネタバレ。
キャンディカラー電子版のおまけSSは周視点のその後のお話です🍬 なぜ俺の恋人はこんなに可愛いのか……と(またしても)心の中だけで思うお話です
— 中庭みかな (@NNMikana) June 1, 2018
③本編後のおまけSS(ブログ限定公開)
SSを書きました(キャンディカラーの世界できみと)
★セーラー服と夏野菜https://t.co/Em0RfTxbaS— 中庭みかな (@NNMikana) June 21, 2018
ネタバレ感想
キャンディカラーの世界できみと
中堅ラノベ作家の天音チヒロこと野田智紘は、絶賛スランプ中。8年付き合っている恋人の永原周には何の不満もないが、彼の職場に新たに入ったアルバイトの未衣あかりのあまりの愛らしさに、周を奪われるのではと動揺を隠せません。
本作の良さは、まず地の文からして世界観がすごく美しくてかわいらしいこと。タイトルの「キャンディカラー」が示すように、まさに透明感があって、読めば読むほどに優しい甘さがふんわりと口の中に広がるような、読み終えるとその甘さがほんのりと残りながらもどこか喪失感を感じるような、まさに「甘くてやさしい」「かわいくて切ない」、キャンディーのようなお話になっています。
中庭みかな先生の文章はどの作品もとても繊細で、そこは本作も変わらないところなのですが、普段はどこか物寂しさや強い孤独感よりも、包み込むような甘さとやさしさや美しさを強く感じさせるような言葉選びになっていて、そこがとても読みやすいところでもあり、個性でもあり、胸がキュッと甘酸っぱく締め付けられるような良さでもあるなと思いました。
また、本作の主人公である智紘は、「小説を書くという好きなことを仕事にしたものの、全く作品が売れていない。自分の”好き”は正しいのか?追求していいのか?」という仕事に関することに加え、「もともとは女の子が好きな周に自分が好きだと言ったせいで縛り付けてしまっているのではないか?彼を好きな女の子に譲った方がいいのではないか?」という恋愛に関することにも悩まされています。
仕事も恋もうまくいかないと悩む中で、智紘は「周のために何も残せていないのに、向き合うのが怖くて(周から)逃げようとした。独りよがりな結末を押し付けて、満足するつもりだった」と、周と未衣をくっつけて逃げ出そうとした自分を諌め、周に向き合い、彼が自分を好きなのかを確かめることにします。
寡黙な周は最後まで面と向かって智紘に「好き」とは伝えられないのですが、それを補って余りあるくらい、行動で雄弁に示してくれます。キスしたり、抱きしめたり、セックスしたり、拙くも「愛してる」と言おうとしたり。最後はそんなこんなで大団円でした💕
ここまで読んでいると、周が智紘の好き好き攻撃を浴びすぎて自分も好きだと錯覚しているのでは?とか、智紘に対する独占欲も一過性のものに過ぎないのでは?という不安を読者は感じると思うのですが、本編前のお話である「たった二文字の甘いもの」(本編は智紘視点ですが、こちらは周視点)を読むと、我々が想像していた周(もしくは、智紘から見た周)よりも彼自身はずっと利己的だし、智紘に対してかなりどろどろした愛を抱いているんですね。智紘の周に対する思いを喩えるならキャンディカラーの透き通ったきらめく純愛ですが、周の智紘に対する思いは、カンカンに熱された極甘のカラメルソースの濃密愛という感じです。
ぜひ、本編と併せて「たった二文字の甘いもの」も楽しんでほしいです!
ちなみに、脇役カプとして、周の勤めるカフェレストランのオーナーである静真仁に片想いする後輩のイケイケな映像クリエイター・成島一成が登場するのですが、こちらもかなりの良カプです。
ツンツンな静を振り向かせようと、彼の大事な人に粉をかけたりとちょっかいをかけまくる成島。しかし結局は「来るなら正々堂々と来なさい、一成」と一喝されて、しょんぼりしつつも静本人に真剣にアプローチすることに。
言葉の足りない周と智紘カップルを心から応援してくれている、どっしりと構えた兄のような存在の静が、成島のことになるとやけにムキになって感情を露わにするのがかわいいです。逆に成島も、智紘には遊び人ゲイという感じのテンションで接するのに、いざ本命の静を前にすると、借りてきた猫のように大人しくなってしまうのが愛おし過ぎて…。
脇役二人の動向にもぜひご注目ください!👀✨
たった二文字の甘いもの
高校3年生の夏休み、智紘に花火に誘われた周。現在に至るまで、周は何を考えて智紘とともに過ごしていたのか、彼の智紘との思い出を辿ります。
本編の感想でも言及しましたが、「たった二文字の甘いもの」で面白いのは、周の予想外に重い智紘への愛です。
一番顕著にそれが分かるのが、自分の店を持たせてやると話を持ちかけられた時に「智紘のために断った」と周が智紘に説明した時のことです。智紘は当時自分が仕事漬けで体を壊しがちだったために周が自分を心配してここにとどまることを選択してくれたのだと、泣きながら無理やり笑って納得するのですが、実はそれ(智紘のために断ったということ)は誤りで、周という名前を聞いたオーナーが彼を中国人だと勘違いして、中国で店を出したいのだと話を持ちかけてきたのでした。中国語を話せない周は話を断ったのですが、なぜか周は智紘に勘違いさせたままでいます。
それは、”「自分のために周は夢を諦めた」のだという智紘の後ろめたい思いさえ、周がきれいだと思って手放せないでいる”から。
これ、ものすごい屈折した愛じゃないですか?智紘がまっすぐに裏表なく周を愛するのに対して、周は何も言わないけれど、智紘にそうして罪悪感を持たせることで心に自分という重しをつけさせ、自分のもとに縛りつけようとしてるんですよ。ヒエ〜〜〜(悲鳴)
一歩間違えればメリバになりそうなこの歪な愛ですが、智紘が周を頭から信じきっているからこそ、どうにか普通のカップルとして成り立っているんですね…。
淡白そうに見える周の意外すぎる智紘への執着、まさかの腹黒さ(?)にニヤニヤしちゃいますね。
また、周は自分でも「リアリスト」だと語っており、必要ないことは言わない、しない、というシンプルな思考の持ち主なんですが、智紘に対してはかなりのロマンチストです。
例えば、智紘に同居しようと誘われた時も「自分といれば言葉を浪費させてしまう。智紘の書くものを愛する人にとってそれは損失ではないか」と自分といることで智紘が小説家として大成できなくなるのではと不安がったり、「彼の中にある物語を作る要素がなくなってしまわないように、光や色を足していく思いで飴玉を足していた」と智紘の好物である飴玉を補充している時の気持ちを振り返ったり。
無愛想で何を考えているのか分からない周が、実は、小説家として言葉に精通している智紘よりもかなり雄弁かつ繊細に自分の心をそうして表す姿は、とても意外性があって驚かされます。
セーラー服と夏野菜
本編後のお話&コミコミスタジオさんで特典小冊子になったSS(に出てきたあのアイテム)のその後のお話です。
女の子が好きな周(と智紘はたびたび言っていますが、実際のところは周はゲイかもしれないしバイかもしれないし、そこらへんはよく分かりません)のために、セーラー服のコスプレ衣装を買う智紘。
初恋の人を喜ばせたいと頑張る智紘の気持ちが空回りしているのが痛々しいやら、可愛いやらで、笑っていいのか泣いていいのか複雑な感情になります😂
しかし、トラウマになるほどとは、相当恥ずかしかったんですねえ。
あとは、智紘はあまり食事に興味がなさそうだなというのは本編からも薄々勘づいてはいた(仕事に熱中するも寝食を忘れたり、お腹が空いても周にもらった飴玉でしのごうとしたり)のですが、子ども舌ゆえにあまりいろんな種類のものが食べられないというのが本作で判明しました。野菜だけが苦手で肉か魚が一緒にないとつらいとか、ゴーヤは苦いから食べられないとか。
智紘は周の料理に文句をつけたりしませんが、だからこそ周は智紘に健康的な食事をおいしく食べさせるために毎食結構悩んでいるだろうなと思っちゃいました。智紘、いつかゴーヤも克服できるといいね。
キャンディカラー・ハロウィン
🍬キャンディカラー・ハロウィン🎃#キャンディカラーの世界できみと pic.twitter.com/IJTbnHT2uj
— 中庭みかな (@NNMikana) October 27, 2020
ハロウィンにお店で仮装することになった周に、智紘がリクエストするお話です。
智紘の妄想があまりにもクリアすぎて、もうお家でそのプレイやりなよ!!と笑ってしまいそうになりました😂
結果的には智紘の理想とは違った仮装になってしまったようですが、周と軍人のイメージってかなり合うよな…と私もにやけてしまいました🤤 硬派な印象だし、普段から鍛えてるから絶対に似合う!!
静さんや未衣ちゃんはどんな仮装をしたのかな〜とか、帰宅してから智紘は個人的に(周に見せるためだけに)仮装したりしたのかな〜とか、妄想が広がります。
まとめ
ラノベ作家の天音チヒロこと野田智紘は、絶賛大スランプ中。付き合って8年になる同棲中の恋人・永原周とは、可もなく不可もなしな平凡な日々を送っていました。しかし、周の勤務先であるカフェに新人アルバイトである未衣あかりが入ったことで、智紘は周があかりに気があるのではと疑うようになり…。
まさにタイトルのごとく、キャンディーのように美しく透き通ったきらめく言葉たちに彩られた、優しくも切ない恋物語です。
長年カップルとして過ごしてきた智紘と周の平穏な日々は、あかりという恋敵(?)の登場で壊されることになります。あかりに砕かれてバラバラになったガラスの破片のような二人の愛すべき日々は、元通りになるのか?それとも、修復不可能として別々の道を歩むことになるのか?
ぜひとも、本編を読んで二人の行先を知ってほしいですし、そこに至るまでの二人とその周囲の人々の葛藤を楽しんでほしいです!🍬✨
「商業作品名」の他同人誌情報
キャンディカラーの恋だから
同人誌「キャンディカラーの恋だから」は、まるまる一冊すべて「キャンディカラーの世界できみと」の番外編のお話です。
主には智紘がエゴサーチをするお話なんですが、周とのイチャイチャ温泉旅行話や静さんと成島さんカップルの進展なども分かり、てんこ盛りな内容になっています。
ネタバレ感想はこちら⬇️
Sucre glace
同人誌「Sucre glace」は、中庭みかな先生の商業9作品の番外編SS+書き下ろしSSが掲載されています。
「キャンディカラーの恋だから」は、書店特典、書き下ろし、無配ペーパーの3作品が載っていました。智紘と周の過去から本編のその後まで、いろんな角度から楽しませてもらえます。
ネタバレ感想はこちら⬇️